口から言葉がするする出てきた、三十路の朝。
三十路前日。
何かを察知したのか、息子氏は珍しく高熱出して風邪。
夜中もうんうん唸りながら、母を布団から追い出していく。
去年なら眠れなくてきっと怒ってたけれど、今年は「あーハイハイ。」と先に起きてしまう。
こっそり布団を抜け出して、朝から録画していた3月のライオンをにまにましながら観る。
「ママーーママーマーマー!」
大絶叫する息子を抱えて、無印良品のだめになるソファでひといき。
汗をかく二階堂くんの顔や美味しいそうなごはんを見つめる。
3月のライオンは、どことなく水が印象的に使われてて綺麗なアニメだ。
今日のごはんは、どうしようかな。
「ぱーん、ぱん」
最近、1歳児はひまわりの種たっぷりのドイツパンが好き。
ブレッドナイフでドイツパンを切って、スープとかチーズを並べていく。
大人は、ベーコンエッグ。我が家は、卵はひとり2個。
のんびり起きてきた旦那さんが、冷蔵庫から私の好きなパティスリーのケーキを出して「30」の蝋燭を刺していく。
「おめでとう。三十路の目標は?」
「目標?ない」
「えー!何かないの?」
1秒、2秒考える。
「強いて言うなら、力まない」
不思議と言葉がするする出てきた。
「力まないし、愉しむ。」
三十路って、30歳って、何か特別な響きだった。
特に、藻掻いて苦しんで失って、失って、失ってきた20歳から考えると遠いものだった。
朝目覚めてみると、なんてこと無い。
生活が地続きでそこにいて、なってみると抱負はないけど特別でもない三十路。
思い出すと、失ってばかりでなくて得られるものも知ることが出来たこともたくさんあった。
「ふーん。いいんじゃない?楽しんで。」
素っ気なく旦那さんが言う。
「何かやらないの?資格とるとかー」
そういうところは即物的だなぁ、と思う。いつものことだが。
これから、いつも通り頑張りすぎたり、落ち着いたり、考えすぎたり、ぼんやりしたり、興奮したり。
行きつ戻りつつ。
力まず、愉しいひとになれますように。