めぐり合わせの味。
邂逅!
お使いついでに、夕飯も食べてきたらいいよとうちのひとは言う。
そういう時間、滅多に、今まで無かったので。
その時間に対して、邂逅!と頭の中で叫んでいた。
ふらふら伊勢丹まで向かい、人混みの中でもみくちゃになりながらお使いを済ませた。
このお惣菜コーナーで、傍若無人に富美家のしっぽくうどんセットを買ってもいいし食べたこともないお弁当のセット何かもいいなぁ。
でも、家で食べたくない。
家に帰る前に、何処かでワンクッション置いて食べてホッとしたい。
またあてもなく、ふらふら電車に乗る。
ふつふつと、行きつけの酸辣湯麺や餡がとろける海鮮汁そばを思い出して駅を降り立つ。
階段を駆け上がり、店に着くと「予約で満席」の文字。
そうだ、土日は特に混む店なのだ。
失意の中、最寄りをふらふら。
唯一の中華料理屋に向かうと、あるはずの建物がごっそりなくなってる。
何度も店があったはずのところをうろつくが、ない。
重たい足取りで歩きスマホをすると、どうやら年末潰れたらしい。盲点。
こうなったら、行くのは蕎麦屋。
ほぼ年中無休の蕎麦屋。
いつもは、子連れで座敷に座って慌てて食べている。
テーブル席の、昼酒のひとを恨めしくも羨ましく見ているのは食い意地が張っていたからと思う。
蕎麦屋の電気は着いていた。
運良く、テーブル席も空いていた。
ドキドキしながら、「あの、小さいビールはありますか」と要領を得ない質問をしてまごつく。
だって、夜にひとりで外食は稀で数々の一人酒をしてきたが蕎麦屋でひとり酒は初めてなのだ。
蕎麦屋飲み、処女、喪失。
下世話な単語を浮かべながら、6オンスタンブラーにとくとくと小瓶のアサヒビールを注ぐ。
瓶ビールだろうと、生のジョッキだろうと泡と液体の配合には自信がある。
おからの小さいおかずをパクパクつまんで、ちびちび飲む。
一口、二口で最近はもう酔ってしまう。
じゅ、っという音と共に天ぷら蕎麦がきた。
冷たいつけ蕎麦が苦手なので、夏でもあつあつの天ぷら蕎麦を頼んでしまう。
吸い込むように食べても、まだまだお腹が減る。
えーい、モツ煮込みも追加。
調子に乗ってるなぁと思いつつ、パクパク食べちびちび飲む。
やっと小瓶の半分飲んで、もう限界。
たまには、間に合わせの味も悪くない。
むしろ、めぐり合わせの味。